2021年4月29日
最終更新: 2023年4月16日
みなさんにも、こんな経験、ありませんか?
「この曲、どっかで聴いたことあるんだけど、どこで聴いたか思い出せない。曲名もわからない。んー歯がゆい」
6年前、大好きなブラジル人シンガー、Luciana Souza のアルバム『Neruda』に収録されている『Memory』という曲を聴いたとき、とても懐かしく切ない感情が蘇り、自然と涙が頬をつたいました。どこで聴いたのか思い出せず、なぜ涙が出たのかもわかりませんでした。Memory という曲名で調べてみましたが、参考になる情報はみつかりませんでした。気になって仕方がなかったので、昔、J-waveの「Groove Line」という番組で、リスナーが調べて欲しい曲のメロディを鼻歌で歌い曲名を調査するというコーナーがあって、それを参考に鼻歌ではなくピアノで再現した動画をフェイスブックに載せて情報を求めてみました。
残念ながら反応はなく、気になりながらも曲名調査はそこで断念しました。
先週のことです。
茅ヶ崎駅近くにあるクリニックで胃の内視鏡検査を受けたのですが、鎮静剤を使用するため車では行けなかったので一時間近く歩いて向かうことにしました。道中に聴く良い音楽はないかとAmazonのお薦めリストをみたら、スウェーデン人ピアニスト率いるBobo Stenson Trioのアルバム『Contra la Decisión』が出てきました。「決意に反して」という意味のスペイン語のタイトルに興味を持ったのと、余裕のある演奏に心地よさを感じて、その日のお供はこのアルバムに決めました。
国道一号線の「本村」という交差点付近手前で、「佐々木卯之助の碑」というのをみつけました。ん?誰だろう?と足を止めました。佐々木卯之助は、幕末の時代に茅ヶ崎村民を飢餓から救った英雄だったことがわかりました(詳しくはこちらのページをご参照下さい)。
一人歴史に思いを馳せていたら、突如、あの6年前に聴いた懐かしいメロディが聞こえてきたのです!!!ジャズにアレンジされていましたが、確かにあの曲でした。
すぐさま、曲名を確認しました。
『Canción y Danza VI』
再びスペイン語でした。
『歌と踊り 第6番』という意味です。
作曲者はスペイン・カタルーニャ出身の作曲家 Frederic Mompou フレデリック・モンポウでした。
やっと曲名がわかりました。
次は、「どこで聴いたのか?」の謎解きです。
恐らく、何かの映画に使われていたんじゃないかと狙いをさだめ、”Canción y Danza VI", "Película|(映画)"というワードで検索をかけてみました。
みつけました。
『Cría cuervos』
邦題は「カラスの飼育」です。
1976年のスペイン映画です。
母親を亡くした少女が主人公です。
大学生の時に観たのを思い出しました。
Youtubeに字幕なしの全編が載っていたのをみつけ、久しぶりにもう一度みてみました。オープニングにあの懐かしいメロディが流れました。胸が一杯になりました。
当時は理解できなかった何気ないシーンの数々にフランコ独裁体制への抵抗を表現した隠喩的なメッセージが込められているのを察知しました。長くなるので、詳しくはまた別記事で書きたいと思っています。
ようやく、涙が出た理由もわかりました。
今度は、自分でも無性に弾いてみたくなり、楽譜を探して弾いてみました。
映画に繰り返し出てくる、Canción(歌)のパートだけです。
6年ごしのモヤモヤがようやく解消されました。
と同時に、曲名が判明するまでの一連の流れにも、何か「えにし」のようなものを感じ、この曲に纏わる思い出をを胸に弾きました。