2022年1月28日

大統領就任式の思い出

最終更新: 2022年6月13日

中米ホンデュラスで初の女性大統領が誕生し、27日大統領就任式が行われた。

米国からはハリス副大統領が出席し、話題になった。

国民が直接大統領を選ぶ国々では、大統領就任式はビッグイベントで、私は幸運にもホンデュラスで立ち会うことができた。

今日はその時の思い出を書こう。

ホンデュラスはアメリカと同じく大統領任期は4年。

私は1993年3月、2年間の任期で在ホンデュラス日本大使館へ在外公館派遣員として赴任し、1995年同月までの任期中に大統領選挙と就任式が行われた。

就任式には各国の要人が出席する。

日本からはホンデュラスと縁のある衆議院議員が出席した。

私の任務は日本代表一行のスケジュールが滞りなく運ぶように全行程同行することだった。

分刻みの動きに従って、配車の確認と関係各所に指示を出した。
 

 
当時の一枚。

時代を感じさせる巨大無線を手に、空港の滑走路そばを歩いている。

(余談その1 ホンデュラス首都テグシガルパの国際空港は世界で2番目に滑走路が短いことで有名。着陸の度に機内で拍手喝采が起こっていた。

余談その2米国からは当時もゴア元副大統領が出席した。この時エアーフォースツーを直接見ることができたのはささやかな自慢)。

ホンデュラスに日本から要人が来る頻度は少ない。一行を迎える準備のため残業続きで疲労困憊だったので、「大きな大使館の館員さんたちはいつもこんな想いしているんだ~大変だろうな~。よりにもよって自分の任期とぶつからなくても...」などと、やる気のないぼやきを呟いていた。

就任式は国立競技場で行われ、オリンピック開会式のように各国の代表団がスタジアムを一周する。

大使館スタッフは出発口で一行をお見送りする予定だったが、直前になって議員が「君たちも一緒にいこう。多い方がいい」と、誘ってくださり、急遽、心の準備なく日本代表団の一員としてスタジアムを歩くことになった。

会場は超満員。

場内に「Jaaaapóooooooon(日本!!!)」というアナウンスが流れると、それまでとは桁違いのどよめきと拍手が起こり、まるでオリンピアンのように大歓声を浴びながら一周した。言葉に表せないほどの高揚感を感じた。長年にわたり日本のODAがホンデュラスに貢献し、ホンデュラス国民の信頼を得てきたのを肌で感じ、就任式を体感できたことを幸運に思い、忙しさをぼやいていた自分を恥じた。後にも先にも、あれだけ多くの歓声を浴びることは、もうないだろう。それほど稀有な経験だった。

あれから28年。

ホンデュラスは当時と比べると経済も治安もかなり悪化している。

残念ながら、日本が巨額を投じてきたODAは部分的かつ一時的には人々の暮らしに貢献してきたかもしれないが、国全体の幸福度を上げるまでには至らなかった。

新大統領が変革をもたらし、徒歩でアメリカを目指すような国民がいなくなることを心から願う。