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半世紀記念日

この世に生を受けてからちょうど今日で満50年を迎えました。


ここ数年は毎年故郷でこの日を迎えて大切な方々に温かく祝っていただいていました。

改めて自分がどれだけ沢山の人々に支えられてきたかを実感し、幸せな誕生日を思い出しながら、今年は自宅でひっそりと過ごしています。

今朝、両親の遺影に手を合わせ、命を授けてくれた感謝を伝えたあと、ふと母子健康手帳を見たくなり手にとりました。


今までは出生時間と体重、身長くらいしか見ていなかったのですが、今年はなぜか、「分娩経過」に丸印がつけられた「骨盤位牽出法」が真っ先に目に入りました。


「骨盤位」とはいわゆる「逆子」のことです。


50年前の8月10日午前2時、長時間にわたる分娩を経て生まれてきた私は両掌にのるほど小さく、肌は紫色で母はとても心配したそうです。


逆子で生まれて大変な難産だったという話は聞いていましたが、この骨盤位牽出法なるものがどんな手技なのか、また現代でも同じ分娩法が選択肢となりうるのかを詳しく知りたくなり、調べていくうちに興味深い論文をみつけました。

日本医事新報社webページより


骨盤位の分娩は選択的帝王切開のみか 【ガイドラインに記載された基準により経腟分娩が減少し,選択的帝王切開が加速】 

板倉敦夫(順天堂大学産婦人科教授)(2016年03月19日発行 P54)

骨盤位(逆子)は,以前は経腟分娩が普通であった。筆者が産婦人科医になるべく研鑽していた20数年前は,骨盤位牽出術で児頭の娩出をスムーズに行えることが,一人前の産婦人科医として認められるための技量のひとつであった。

ところが,現在多くの施設で正期産単胎骨盤位は選択的帝王切開による分娩が行われており,産婦人科研修を行っている若い医師の多くは,骨盤位の経腟分娩を見たこともない。これは骨盤位を経腟分娩と選択的帝王切開で割り付けたランダム化比較試験の結果,選択的帝王切開で出生した児の周産期予後が良いとの2000年のLancet誌の報告が引き金となっている。01年には米国産婦人科学会(ACOG)が「正期産単胎骨盤位は選択的帝王切開が望ましい」と推奨した。その後,症例の割り付けにバイアスがあるなど,この論文に対する否定的な意見が多くなり,ACOGも06年には修正した。

わが国でいつから経腟分娩が減少したのかは定かではないが,08年に発刊された『産婦人科診療ガイドライン─産科編』に「骨盤位の取り扱いは?」とのCQがつくられ,そのAnswerに「~経腟分娩も選択できる」と書かれている。決して経腟分娩を否定する推奨ではないものの,各施設・医師の技術に任されていた分娩様式の決定が,ガイドラインに基準が記載されたことにより,帝王切開分娩が加速した可能性も否定できない。

1度遮られた技術は指導者の減少をまねき,若い産婦人科医師が安心して研修できる環境を減らし,容易にその技術は回復しない。

なるほどー。


2000年のLancetが引き金となって、一気に骨盤位の分娩は経腟から帝王切開の流れになったようです。


その流れはすっかり定着したことが、国立成育医療研究センターの「骨盤位外来」HPの説明からもわかります。

妊娠37週時点で逆子(骨盤位)になっている割合はおよそ3%といわれていますが、そのほとんどは帝王切開分娩での出産となります。その理由としては、逆子の状態での経膣分娩で起こりうる①分娩外傷(骨折・神経損傷)②臍帯脱出→新生児仮死・死産 ③分娩遷延による新生児仮死・死産 などのリスクをあらかじめ回避するためです。当センターでも骨盤位症例に対しては全例帝王切開分娩を施行しています。

私は38週目の出生でしたので、約3%に入ったわけです。

現在、日本最高峰の小児病院では、逆子に対しては全例帝王切開が行われていることがわかりました。

ハイリスクな分娩で生まれた私は、もしかしたら、死産か、或いは障害を持って生まれていたかもしれません。


そう思うと、今こうして生きていられることが奇跡そのものだと痛感します。

今は廃れてしまった産科技術の確かな産婦人科医と医療スタッフ、そして何より母の頑張りのおかげだったことを今更ながら認識しました。


亡母が残してくれた母子健康手帳を通して、生かされた命の重みをより一層感じた50歳の誕生日です。

© 2014 by MIDORi

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