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Luiza ルイザ


昨年、ピアニスト永見さんと共演を始めてレパートリに加えた曲がありました。

Antonio Carlos Jobim(アントニオ・カルロス・ジョビン)の「Luiza」です。

これまで、ジョビンは娘のためにこの曲を作ったという話を、あちこちで耳にしたのですが、、、

「君を忘れるために曲を作った」「君の欲望はいつも僕の欲望だ」など、娘に対しての愛情とはとても考えられない詩なので、経緯を調べてみることにしました。

ブラジルの親戚からプレゼントしてもらった本です。

この中に「Luiza」に関する記述があるので抜粋します。

O escritor Gilberto Braga pediu a Tom una música para ser o tema pricinpal de sua novela Brillante*TV Globo, 1981 que tinha no elenco a loira Vera Fischer en cujos cabelos o maestro se inspirou para criar vários versos de letra. Para sua surpresa, quando a novela foi ao ar Vera Vischer apareceu morena e com cableos encaracolados.

”作家Gilberto Braga(ジルベルト・ブラガ)はTom(トム、ジョビンの愛称)に、テレビドラマ“Brillante (ダイヤモンド)”(1981年 グロボTV)の主題曲を作ってくれないかと依頼した。 ドラマの配役に金髪のVera Fischer(ヴェラ・フィシェル)がいて、巨匠(ジョビンのこと)は彼女の髪にインスピレーションをうけていくつか文を作った。しかし、実際オンエアされたドラマのVera Fischer は黒髪でクルクルのヘアスタイルで登場しジョビンは驚いたそうだ。”

さらに、作詞にはRenaldo Bõscoli(ヘナウド・ボスコリ)も協力したという説明が続きます。

Na sua biografia, Eles e eu-Memórias de Renaldo Bôscoli, este diz ter sido procurado por Tom e deu um jeitinho na letra, ainda imcompleta, inserindo algunos versos. Eis a declração.

”Renaldo Bôscoliは伝記「彼らと私、ヘナウド・ボスコリの記憶」の中で、トムに促されて、未完成の詩にいくつかヒントを与えたと述べている。以下はボスコリの告白。

Mas a minha maior mágoa de Tom veio depois, em Luiza quando o ajudei em algunos versos da segunda parte. É quando a letra fala de sete cores, sete mil amores etc. Contribuí com umas quatro, cinco frases. Tom alegou que já havia apanahado uma boa grana adiantada para fazer a música sozinho e que ia pegar mal aparecer com uma parceira. Relevei, mas agora, revelo. しかし、私がトムについて最も不愉快に感じたのは、ルイザのセカンド・パートのいくつかの文章を手伝ったときのことだ。詩が七色、七千の愛と言うところだ。私は、4つ5つ、文を手伝ったのだが、トムはもうすでに一人で曲を作るためにかなり思いついていたと申し立て、共著者の名前がでるのはよくないと拒んだ。私は同意(relevar)した。しかし、今私は、このことを暴露(revelar)する。”

以上の流れでルイザは作られました。

曰くつきな感じがしますね。

そして、ジョビンの娘ではなく、ドラマの主人公だったということがわかりました。

ちなみに、 そのドラマの主題歌動画が、YouTubeにありました。


では、なぜ「娘さんのために作られた」という情報が日本では広く流れているのでしょうか。

考えられる理由の一つとして、Chico Buarqueの「Luisa」との勘違いかもしれません。

こちらのエピソードも面白いのでまた後日紹介しましょう。

あともう一つは、日本語で「ジョビンが娘のために作った曲」と断言しているサイトが存在することです。バッシングになりかねないので特定はしませんが、そのページには情報のリソースが書かれていません。

情報リテラシー、大事ですね。。。

以下全訳を掲載します。

Águas de março(三月の雨)のように、ワードの羅列から始まります。

Luiza/Antonio Carlos Jobim MIDORi 訳

Rua, 通り Espada nua むき出しの剣 Boia no céu imensa e amarela 空にうかぶ大きくて黄色の浮球 Tão redonda a lua まん丸の月 Como flutua まるで浮かぶように Vem navegando o azul do firmamento 天空の青さの中を航行しながらやって来る  E no silêncio lento そして穏やかな静寂の中 Um trovador, cheio de estrelas 満天の星の下で、ある詩人は Escuta agora a canção que eu fiz 僕がたった今作った曲を聴く。 Pra te esquecer Luiza ルイザ、君を忘れるために作った曲を。 Eu sou apenas um pobre amador 僕は哀れな素人にすぎない Apaixonado  Um aprendiz do teu amor 君の愛に夢中になっている初心者。  Acorda amor 愛する人よ、思い出して。 Que eu sei que embaixo desta neve mora um coração

この雪の下に心が存在することを僕は知っているんだよ。

Vem cá, Luiza ルイザ、こっちへおいで。 Me dá tua mão 手を貸してごらん。 O teu desejo é sempre o meu desejo 君の欲望はいつも僕の欲望だよ。 Vem, me exorciza おいで。僕をのろっておくれ。 Dá-me tua boca 唇を僕にくれないか。 E a rosa louca 狂ったバラが Vem me dar um beijo 僕にキスをしに来る。 E um raio de sol そして Nos teus cabelos 君の髪を照らす太陽の光は Como um brilhante que partindo a luz まるで光を分散させながら Explode em sete cores 七色に発するダイヤモンドのよう。 Revelando então os sete mil amores 7千の愛をあらわにしながら。 Que eu guardei somente pra te dar Luiza ルイザのためだけに僕が抱いていた愛を。 Luiza ルイザ Luiza ルイザ

私がジョビンの弾き語りを動画に掲載するときは、「Cancioneiro Jobim ジョビン全集全5巻」の楽譜を使用する、というスタンスでお届けしていきたいと思っています。

この全集を監修したジョビンの息子、Pablo Jobimパブロ・ジョビンは巻頭でこのように述べています。「ピアノ用の作品を正確に書くことは常に父の最大の心配事だった。よって、この全集は単にコードとメロディーだけでなくそれ以上の音楽情報を載せることに力を注ぐことになった」と書いてあったので、ジョビンは自分の楽曲をクラッシックの曲と同じように自分の意図するように後世に残したいという想いが込められているように感じるからです。

本当は前奏もエンディングも楽譜通りに弾けたらいいんですが…。難しい…。

今後の課題にします!

素晴らしいアレンジは永見さんにお任せしたいと思います!

2月8日(木)、永見さんとのリビングライブでもおそらくこの曲を演奏します♫ 


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