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親友・美香さんへ


2015年6月30日、大切な大切な親友がこの世を去りました。享年46歳。

2度目の命日を迎えました。

今年は、彼女へ贈った言葉を、私のブログでシェアしようと思います。

美香さんがこの世でしっかり生きた証をしっかり残しておきたいです。

<2015年7月4日(土) 上島美香 お別れ会 弔辞全文>

美香さん、ついにこの日が来たね。沢山のかたが来てくださって、ほんとによかったね。

今から1か月半前、美香さんから電話をもらって、自分のお別れ会で弔辞をお願いしたいって言われたとき、私はショックのあまりなんと答えていいかわからなかった。そんな私に、美香さんは穏やかな口調でこう言ってくれた。

「みどりさんとはいろんなことを一番共有できたと思うからお願いしたいの」

その後、美香さんが自分で考えた「お別れの会」の式次第がメールで送られてきた。

微に入り細にわたって内容が書いてあるのを読んで、ああ、美香さんは自分らしくその時を迎えようとしているだなーっていう想いと覚悟が伝わってきて、私もやっと、現実を受け入れて、美香さんの望みに向き合う決心がついたんだ。

同時に、ひょっとしたら美香さんは直接私からの弔辞をききたいのかもしれない、って思い始めた。

美香さんが癌研の緩和病棟に入院したと連絡があって会いに行ったとき、弔辞のことを改めて話したら、美香さんは「実は今日弔辞を持ってきてくれるかもと思ってたの。辛いことお願いしてごめんね」って。

やっぱり、そうだったんだね。すぐに察してあげられなくて、ごめんね。

書き終えて美香さんに送ったら「ありがとう!贈る言葉、とっても素敵!うれしい!みどりさんに早く会いたい、一杯お喋りしたい!」って返事をくれて、ああよかった、って心から思ったよ。

本日ご参列の皆様、これから私が読み上げるお別れの言葉は、直接美香さんに伝えた「美香さんへの手紙・贈る言葉」です。

謹んで哀悼の意を込めて、今日、皆さんと共有させて頂きたいと思います。

 

美香さんと私の出会い。

今から14年前。

あれは、首都圏が大雪に見舞われた冬の一日だったね。

美香さんはイタリア語で、私はスペイン語で、二人とも国家資格の通訳案内士を取得して、3日間の研修に参加したときのこと。

車内で参加者が各自の専門言語と日本語で自己紹介をして、私は「アルゼンチンで政治学(Ciencia Politica)を学びました」とスペイン語で話したところ、Ciencia Politicaという言葉に敏感に反応してくれたのが美香さんだった。

年も近い私たちはすぐに打ち解けて仲良くなり、互いの家に泊まっては、夜を徹してイタリア語とスペイン語を比較して楽しんだり、翻訳や通訳のこと、将来のことを語り合ったり、いろんなを話をしたね。

常に新しいことに挑戦する美香さんのバイタリティーに沢山刺激をもらっていたよ。

私が急きょ難病支援のNPO団体を立ち上げることになり、スタッフを募集していたときは、美香さんの元の同僚のSさんと縁を繋いでくれたり、求人サイトの情報を教えてくれたりと、一杯力になってくれたね。

心から感謝しているよ、ありがとう。

美香さんが独身だった頃、こんなに博識でかわいくて素敵な女性をほっておくなんて、世の男性陣達は見る目がなさすぎる、ってずっと疑問に感じていたら、さすが、美香さん、最高のパートナーと出会ったね!

「結婚して角が取れたって言われた」って日記に書いてたけど、私もそう思ったうちの一人。 Yeyeさんと結婚してからの美香さんは、賢さに加えて優しさを持つ女性になったね。

去年の暮に、うちへ遊びに来てくれたときのこと。

美香さんは 「どうすることもできない不条理なことがあるってお医者さんに言われたんだよね」と話してくれたね。

そして人生の終わりをどう迎えたいか、終活を始めたことも。

「まだわからないから考えちゃだめだよ」って励まそうとする人もいるかもしれないけど、私は美香さんが真正面から現実と向き合おうとしている気持ちを応援したいなって思った。

発症する確率の低い病にかかり、美香さんは、幾度となく日本の医療制度の壁にぶち当たりながら、患者の孤独を沢山味わってきた。

そんな不条理な状況にあっても、美香さんは決して屈することなく、不条理から逃げなかった。

病気の正体を徹底的に調べ、治療に関する世界中の難しい医学論文も読み、高い理解力で自らありとあらゆる可能性を探り、できうる限りのことをやった。

だからこそ、美香さんは不条理を受け入れることができたんだね。

不条理を受け入れた人には受け入れられない人にはない「凄み」と「心の平穏」が芽生えるんだなって教えられたよ。

そんな美香さんはとても高貴で信念の人だって思った。

あの日こうも言ってくれたね。

「みどりさんとは感性も思考もとても似ていて、私たち双子じゃないかと思うほどよ」

そんな風に言ってくれて、本当にうれしかったんだよ。

美香さんは自分の人生を思う存分歩んだね。

幸せの絶頂を感じながら愛する家族に見守られながら旅立っていったんだよね。

大事なのは人生の長さじゃなく、密度なんだって、気づかせてくれたよ。

晩年は翻訳に力を入れて、イタリアの豊かさ・素晴らしさを日本の人たちに伝えたい、って言ってたね。きっと、その夢は美香さんがイタリア語を教えた生徒さんや、イタリア語を通じて交流のあった方々に受け継がれていくだろうと信じてる。

最後に、ブログの中で美香さんが引用していた偉人たちの名言集から、最も私の心に響いた言葉を伝えるね。

死は、積み重ねてきた努力の終わりを意味するものではない。精一杯生きた人生は、その次のより良き人生を導く。

マ ハトマ・ガンディー

美香さんらしくまっとうした人生は、必ず私たちのよりよい未来を導いてくれると信じているよ。

心の髄から、ありがとう。

 

友人代表 みどり



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