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人は見た目!と言うけれど


著者の外川浩子さんに初めてお会いしたのは去年の秋でした。


外川浩子さんは、見た目問題(*)に取り組んでいるNPO法人マイフェイス・マイスタイル(MFMS)の代表です。


私が事務局長を務める「NPOリンパ管腫と共に歩む会」の仲間から、以前MFMSさんの話を聞き、ずっと代表の外川さんにお会いしてみたいと思っていました。


その話をしてくれた大切な仲間が、昨年旅立ちました。


訃報を受けてから今日までの気持ちを言葉で表せる心境にはまだ至っていませんが、支えになれなかった無力感をずっと抱えています。


活動を離れることも考えましたが、若い当事者さんたちが一緒に活動を継続していこうと力になってくれたこと、そして、最愛のご家族を亡くされたご両親の様々な想いに心を動かされ、今やめてはいけないと考えを改めました。仲間がやりたかったことをみんなで実現させるために、社会に対して感じていた生きづらさをなくすために、今後も活動を継続していく決意をかためました。 その過程で、外川浩子さんには何度も相談に乗って頂きました。

「何時でも電話していいからね!」とのお言葉にどれだけ救われたか、わかりません。私が初めて経験した数々の迷いや苦しみを浩子さんは何度も目にしておられ、都度的確なアドバイスをくれました。

今日ご紹介する本「人は見た目!と言うけれどー私の顔で、自分らしく/外川浩子著」を読んで、改めて、人情と思いやりと優しさに溢れた浩子さんのお人柄を感じました。

同書は小中学生から大人世代まで、幅広く読める入門新書を出版する岩波ジュニア新書から昨年11月に出版されました。

「見た目問題」は物心つく頃から取り組むべきと思っていたので、ジュニア新書から出版されたことには大きな意義があると思います。

見た目の症状をもつ当事者さんの気持ちと浩子さんが当事者さんにどうかかわってきたかが紹介されていて、さらに当事者さんをとりまく様々な人たちの話も書いてあり、中でも、かつて当事者をいじめた側にたった人の手記は誰でも無意識のうちに誰かを傷つけている可能性があると、気づかせてくれました。


浩子さんは第三者の立場で活動に関わる意義についてこう述べておられます。


「今でも自分では気づかないうちに当事者を傷つけているかもしれません。どんなに長く活動しても完全にわかるわけではないし、完璧な人間でもありません。こうして本に書いたり、メディアに取り上げられたりした私の発言を目にして、腹を立てたりショックを受けたりする当事者もいるのではないかと、不安に思うこともあります。

でも、何もしなければ何も変わらない。傷つけることを恐れ、活動をやめるのではなく、失敗してもそこから学んで向き合い続けたい。そして、見た目に症状を持つ当事者さんたちが無理にがんばらなくても楽しく生きていける社会になるよう、これからも力を尽くしていきます。(P164)」


再出発を決意した私の背中を、優しく押してくれました。


娘の通う中学校にも寄贈したいと思っています。


一人でも多くの方に読んで頂きたい一冊です。


*見た目問題ー「見た目に問題がある」ということではなく、「見た目を理由とする差別や偏見によって生じる問題」のこと(同書「はじめに」より)

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