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「ダ・ビンチ」と「ブラック・ジャック」  前編

NPOの仕事で先月広島大学病院を訪問した時のレポをやっと書き終えて、さらに間もなく改訂される診療ガイドラインのパブリック・コメントも提出し、ほんのちょっとだけ一段落。


来年、私が理事兼事務局長をつとめる「NPO法人リンパ管腫と共に歩む会」は設立から満20年を迎える。

この節目に、私は一線から退きサポート側へ回ろうと思っている。

バトンを渡す前に、あと3つ大きな仕事をやり遂げなければならない。


NPO以外にも色々とプロジェクトが進行しているのだけど、こんな時こそ休憩をいれなきゃ。


ということで、かなり前に録画していた、NHK BS1 ザ・ヒューマン「立ち止まらない外科医」を観た。


手術支援ロボット「da Vinci ダ・ピンチ」のエキスパート、札幌医科大学竹政伊知朗教授の特集番組だ。


冒頭で、竹政教授はブラック・ジャックに影響を受けたと紹介された。


「ダ・ビンチ」と「ブラック・ジャック」

この組み合わせを聞いて、ある遠い記憶がよみがえった。


2000年、東京国際フォーラムで開催された「第100回日本外科学会」の海外招待講演者に同行する業務を請け負った。


私の担当は、ハーバード大外科代謝栄養研究室のDouglas Wilmoreダグラス・ウィルモア教授だった。

そう、英語の仕事だった。

スペイン語で登録していた通訳ガイド派遣会社からの依頼だった。

確か、開催一週間前くらいだったと思う。

人がいなくて困っている様子だったので引き受けた。


ウィルモア教授は誰に対しても礼儀を持って接するかたで、知性と品格を感じさせるボストン訛りの英語が今でも心地よく耳に残っている。 私と2人で移動するときは私との共通のテーマを探りながら話して下さった。あの時何を喋ったか今も良く憶えている。


通常、同行業務中はお客様の食事中外で待機するが、3日目くらいだったかな、アポイントのランチの前に、お相手の医師の方に了解をとられて私にも声をかけて下さり同席することになった。


途中から私のリンパ管腫支援活動の話になり、リンパ管腫という希少疾患とその画期的な治療法を日本の小児外科医が発見したこと、世界中から治療の問い合わせがあって私はスペイン語圏をカバーし翻訳と通訳でサポートしているという内容をドクター2人に英語で説明するという、大それたことまでやらせて頂いた。 当時はリンパ管腫関連の英語論文をよく読んでいた。 日本語からスペイン語に訳すよりも英語からスペイン語の方が訳しやすいので、もっばら参考資料は英語だった。自動翻訳なんてなかったし、スペイン語圏の論文にも十分にアクセスできなかった時代。今はつくづく便利な世の中になったものだ。

話題を元に戻す。


ウィルモア教授に同行していて、是非教授の基調講演を聴いてみたいと思い、通常はやはり外で待機すべきところ(同行者にとっては休憩の時間でもある)、派遣元経由で許可をもらい日本外科学会のメイン会場への入場が許可された。 ウィルモア教授の研究テーマは、術後の患者の栄養管理だった。食欲を増進させる物質を使って食事を管理し回復を早め退院までの日数を短くする、といった内容だったと記憶する。患者のQOL向上にも病院のコスト削減にも繋がるウィンウィンなテーマだと思った。 教授の講演以外の時も会場にいる限り私も自由に聴くことができた。 やっとここで今日の本題に入る。

日本外科学会創設第100回の目玉企画としてトップバッターで取り上げられたのが、手術支援ロボット「da Vinci ダ・ビンチ」と遠隔医療だった。 初めて見る最新技術に息を呑み、とてつもない可能性を感じたと共に、果たして実際に現場に浸透するのだろうか、という疑問も抱いた。


さらに、もう一つの目玉企画が、「ブラック・ジャック展」だった。 確か若手学会員による企画だったと記憶する。漫画ブラック・ジャックの話の中に手術ロボットが出てくる。番組で竹政教授も言及していた。当時漫画を読んだ誰もが夢物語だと思っただろう。それが現実となったのだ。

ブラックジャックのように医師としての使命感とプロフェッショナリズムを常に忘れず、患者に最良の医療を届けたいという強いメッセージを感じる展示だった。

偶然にもちょうどその頃私もブラック・ジャックを全巻読んで気持ちが盛り上がっていたので、主催者の方々と肩を組んで激励し合いたい気持ちになった。


番組に登場した竹政教授も、もしかしたらあの会場にいらっしゃったのかもしれない。


あれから20年。

番組をみて、ダ・ビンチはものすごい進化を遂げ、ブラック・ジャックの精神は引き継がれていることを知った。


長くなったので、後編につづく…


写真は広島大学病院訪問のあと、事務局スタッフと一緒に行った原爆ドームで撮った一枚。




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