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ブラポル語文法の謎 〜 teu と seu 〜

昨日英語に関する記事を書いて、そういえば最近ポルトガル語のポの字も書いてなかったと思い、今日は前から取り上げたかった話題について書きます!


以前アップしたTom Jobimの曲『Se todos fossem iguais a você(もし世界がみなと同じなら)』の由来について調べるうちに、ずっと疑問に思っていたブラジルポルトガル語の文法が一つクリアになりました。ポルトガル語を知らない方にもできるだけ伝わるように書いてみます!


ポルトガル語には英語のニ人称主格代名詞 You にあたる単語が2つあります。「tu 君は(二人称カジュアル、スペイン語だとtú)」と「você あなたは(三人称フォーマル、スペイン語だとusted)」です。ポルトガルでは tu が、ブラジルでは一部地域を除いて você が主に使われています。ブラジルでも昔は tu が使われていましたが、19世紀終わり頃から徐々に você が勢力地図を塗り替え、次第にカジュアル・フォーマルの区別なく você が使われるようになりました。


以前から抱いていた疑問とは、「você あなたは(三人称)」が主語の時、英語の your にあたる「あなたの(所有格代名詞)」は、文法的には本来三人称 seu/suaが使われるべきところ、二人称 teu(男性名詞の前)/tua(女性名詞の前)を使う場合と三人称seu/suaを使う場合と両方ある、ということです。 強いて英語で例えるなら、yourの代わりにhis/herを使う感じです。スペイン語で言うなら、ustedを使う相手に、tu libroでもsu libroでもOK! という、スペイン語ではありえない衝撃的な文法です。


冒頭で述べた曲、『Se todos fossem iguais a você』の歌詞では、二人称の" tua "が使われています。見ていきましょう。


Vai tua vida 君の人生を歩むんだ Teu caminho é de paz e amor 君の歩む道は平和と愛の道 愛読書『Tom Jobim/Wegner Homem & Luiz Roberto Oliverira』にはジョビンの曲にまつわる話しが書いてあるのですが、この曲のページ内に興味深いエピソードをみつけたので紹介します。下部に私の訳文を添付します。

 

(P45より抜粋) A letra também foi alvo dos puristas da língua portuguesa. O crítico José Fernandes identificou a mistura de tratamentos nos versos: tua vida * segunda pessoa) e iguais a você (terceira pessoa) . Vinicius respondeu ao jornalista pegando pesado: 歌詞もまた、ポルトガル語純正主義者の標的になった。評論家ホセ・フェルナンデス氏は歌詞の中に人称が混ざりあっていると指摘した。tua vida(二人称)とiguais a você''(三人称)だ。ヴィニシウス(この曲の作詞家)はジャーナリストに厳しくこう応えた。  Ninguém, a não ser uma múmia da Academia Brasileira de Letras, dirá à namoda: Minha querida, Eu a amo. Você a coisa mais linda do mundo. O máximo que obterá da namorada será um cometário com as amigas: Ele fala tão difícil... O que se fala no Brasil é : Minha querida, eu te amo. Você é a coisa mais linda do mundo. ブラジル文学アカデミーのミイラを除けば、誰もガールフレンドにこうは言わないだろう。「愛しい貴女、僕はあなた様を愛しています。あなた様は世界で一番美しいです」ガールフレンドから何か言ってもらえるとしたらせいぜい、「友達が『彼って、とても難しい喋り方する人ね』と言ってたわ」というコメントくらいだろう。

実際ブラジルで話されているのはこうだ。「愛しいきみ。僕はきみを愛している。きみは世界で一番美しい」

 

1950年代のエピソードなので、今よりも文法に保守的な人々が多くいたと思われます。それが、時代の流れとともに、「どっちでもいいよ〜」となったみたいです。言葉は生き物ですねー。


ここで、関連動画を2つシェアします。

両動画ともまず教科書の文法を説明します。そのあと、「なんだけどね〜」と前置きをいって、実際の使われ方を説明するのがおっもしろいなーと思いました。

両方とも「私たち何でも混ぜちゃうのよ Misturamos tudo, né/ O brasileiro mistura tudo」と言っています。これこそまさにブラジル人の特徴ですね!

「テキストには載ってない現代ブラポル語」だそうです。


最初の動画は、15:58あたりからteu と seu についての説明があります。ちなみに、その前のセクションでは開母音と閉母音の発音の違いを説明しています。こちらも参考になります。違いをはっきり出せないと単語の意味が変わります。

次の動画は0:34あたりから、「なんだけどね〜」が始まります。

ちなみに、ブラジルポルトガル語のテキストにはもはや使用されていないtuとvós(二人称複数)の活用が除外されていてスペイン語習得者にはこれまた結構衝撃的でした。


活用が4つしかないなんて!

ブラポル語は大らかな言語ですね😅

もっと肩の力を抜いて話してもいいみたいです^_^

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